半年前からツグオは同じ夢を何度も見るようになった。ありえないほど低空を猛スピードで飛行するレシプロ機の群れ。ついには白昼、幻を見るまでになる…。そんなある日、ツグオの元に送られてきたエアメールには、アメリカ行きのチケットとともに夢に出てきた飛行機の写真が同封されていた。
アメリカに降り立ったツグオを迎えたのはアシュレイという名の気の強い女性だった。彼女たちはツグオの祖父・ジュードと共にエアレースチームを組んでいたのだ。半年前に心臓病で急死した彼の遺言状の中に、そのチームをツグオに託すとの記述が…。
世界で唯一にして最速の草レース…リノ・エアレース会場で、ツグオは祖父の残した黄金の飛行機と対面する。それはこの半年、夢に出続けていた機体だった。
【前号までのあらすじ】
エアレース会場で知り合ったジャスパー夫妻。他界した祖父の友人でもあった彼らから、レースのそして飛行機の楽しさを教わるツグオ。しかしそのジャスパーはレース中の事故で帰らぬ人となった。ツグオは死者が出たにもかかわらずレースを続行するパイロットたちの態度に戸惑いを隠せない。アシュレイからもパイロットの"覚悟"を聞かされ、混乱したツグオは会場から走り去ってしまう…。ショックで過去の記憶を取り戻したツグオ。それはアシュレイや祖父たちの"空への情熱と夢"も思い出すという事だった。それを見届けるためにチーム"スウィフト"への参加を決めたツグオに、アシュレイは笑顔で手を差し伸べる。
レノ・エアレース終了後もアメリカに留まっていたツグオを連れ出したアシュレイ。行き先はなんと大規模な森林火災の現場だった! チームを組み飛行機を使った消火を行うアシュレイたち。ツグオはそこでかつて「火消しのフレディ」と呼ばれた老人と知り合う。消火隊の予想を超えて延焼する森林火災。その炎は民家にまで接近していた。フレディと共に湖へと飛んだツグオは、巨大飛行艇マーズを飛ばすことに成功する。マーズをはじめフレディの旧友たちの参加により火災はようやく鎮火するのだった。
火災現場から戻ったアシュレイの元に、奇妙な飛行機で訪れた少女パイロット・マリア。彼女はグリーンランドに墜落したB-29の修理と回収の共同作業を提案してきた。渋るアシュレイをよそに躊躇いなく承諾するツグオ。
「お金の話しをした時に即答できる奴は信用できる」「それに…なんだか面白そうだったから」
その姿に在りし日のジュードの姿を重ねたアシュレイはメカニックを連れ北極圏へと飛ぶ決意をする。
グリーンランドで一行を待っていたのは、マリアの相棒であるジョシュア・ガブレスキィと、スポンサーのドミトリ・ステンマルクだった。そして大氷原にその巨体を横たえるB-29。その姿は掘り起こされたばかりの恐竜のようだった。
極寒の地での作業はそこそこ順調に進む。しかしタイムリミットーーこの地が雪に閉ざされるまでの時間はあまり残されていない。そんな中、輸送の要だったヘリが故障のため不時着してしまう。さらにマリアが体調不良で倒れてしまった。ジョシュアにクビを言い渡すステンマルク。しかし彼はツグオの手にした古いカメラを見て絶句する。そのカメラはヘリの不時着から基地まで徒歩で帰還したツグオが途中で発見したもの。カメラの持ち主こそステンマルクの父親だった。
改めてツグオたちにB-29の修理を頼むステンマルク。そして「仲間」の遺体を発見してくれたツグオに対し、米軍も協力体制をとってくれることになり、B-29の修理は急ピッチで進む。雪と氷に閉ざされる冬季を目前に、ついに修理を完了したB-29.銀翼は再び大空へと舞い上がった。
スウィフトの事務所へと帰還したツグオとアシュレイの元にジュードの知り合いの老婆が訪ねてくる。修復の依頼にきた彼女が見せたのは…超希少な「空飛ぶ自動車」エアロカーだった。パーツを求めアメリカ大陸を横断するツグオとアシュレイ。「偏屈」と有名なコレクター・ラプラータの元で彼の出す難問をなんとかクリアし、空飛ぶ自動車は復活した!
そしてチーム・スウィフトは次のリノに向け本格的な準備を始める…。時速800キロを超えるため主翼の改装をはじめとした、サイドワインダーの大改造計画がスタートした。しかし、その矢先にメインスポンサーから契約解除の報が…。結局、効率を第一に考える担当者ホプキンスを動かしたのは、チーム・スウィフトのメンバーの、大空とスピードに賭ける"愚かな"までの情熱だった。
困難を乗り越えながらも新たな翼を得たサイドワインダー。時速800キロオーバーに向け、リノでのテスト飛行が始まった。順調に飛行をするかに見えたサイドワインダーだったが、突如コントロールを失いスピンに陥る。なんとか機体を立て直し帰還を果たしたアシュレイ。このトラブルで彼女はかつて似たような光景を目撃していた事を思い出す。それは1999年のリノ。アシュレイの目の前で彼女と同じ名を持つ機体が墜落していたのだ。その記憶がトラウマとなり、操縦に拒否反応が出てしまったアシュレイ。彼女に再び「空」を取り戻すため、ツグオに出来る事は!?
松田未来
【まつだ・みき】
東京都出身。
漫画家。メカを題材にしたマンガを多く手がける。 代表作は『アンリミテッド・ウィングス』『フォーチュン+ブリゲイド』『天空少女騎士団』『空軍大戦略ふぁいてぃんぐ☆うぃんぐす』『V&W CO.Ltd~航空機再生株式会社』『オオヤシマ~遣独愚連艦隊航海記』『極光ノ銀翼』など。
ツグオ・クロガネ
人生の目標を見つけられずニートな生活をしていた。夢に出てくる飛行機に何故か懐かしさを感じ、その理由を知るために渡米する。
アシュレイ・ウィングフィールド
チーム"スウィフト"の飛行機Sidewinderのパイロット。
Sidewinder
ベルP-39エアラコブラ。第二次世界大戦初期に活躍したアメリカ空軍のレシプロ戦闘機。胴体中央にエンジンを置く珍しい形態。スウィフトでは機体を黄金色に塗装している。