室町幕府第十三代征夷大将軍・足利義藤。後に義輝と名を改め「剣豪将軍」の勇名を馳せる事になる彼であったが、父・義晴より将軍職を譲られたのは弱冠十一歳の時。しかし幕府は管領である細川六郎春元が実権を握り、将軍職はまさに「飾り物」と言える存在であった。初陣を敗戦で終えた義藤は自らの弱さを恥じ、必ずや天下一の武人になると心に誓う。
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【前号までのあらすじ】
牢人・霞新十郎として旅をしている大樹は浮橋を伴い美濃の国にやってきた。“蝮(まむし)”と呼ばれる斎藤道三は一代でこの活気在る国を築いた。大樹はそんな道三に興味を持つ。大樹と対面した道三は、一目で大樹の語る名『霞新十郎』を偽りと見抜く。そして側近である松岡兵庫助と真剣での仕合いをするよう提案した。明らかに大樹に不利だと予想する浮橋…。
足利義藤(あしかがよしふじ)
後の足利義輝。若干十一歳で征夷大将軍(「大樹」はその唐名)となった。朽木鯉九郎の指導で剣の才能が開花し始める。行方不明となった真羽を探している。
真羽(まは)
義藤に最初に剣を教えてくれた侍女・お玉にそっくりな少女。犬神人(都で死体処理をしている人々)の娘で、義輝が保護した。
朽木鯉九郎(くつきこいくろう)
大樹の剣の師匠。義藤の才能を見抜き、それを伸ばすと同時に、その事実が政敵の目に触れないよう腐心している。
浮橋(うきはし)
鯉九郎の部下で、隠密。
鬼若(おにわか)
奇抜な格好をした妓楼の若き楼主。真羽を誘拐したが逃げられ、大樹に腕を切られた。
宮本昌孝
【みやもと・まさたか】
1955年、静岡県浜松市生まれ。日本大学芸術学部卒業後、手塚プロ勤務を経て執筆活動に入る。95年『剣豪将軍義輝』で、歴史時代作家の新旗手として注目を集める。おもな著作は、『海王』『風魔』『陣借り平助』『天空の陣風(はやて)』『家康、死す』など。
東冬
【あずま・とう】
「月刊COMICリュウ」2008年5月号で『嵐ノ花 叢ノ歌』の連載でデビュー。イラストレーターとしても活躍中。